M&Aに向けたQMS文書の準備は、見栄えのよい資料集を新しく作ることから始めません。現在使っている手順と実際の記録を特定し、買い手が運用をたどれるように整理します。本稿は譲渡企業側の文書整理の手順であり、法令上の保存範囲や期間を一律に示すものではありません。
最新版と過去の記録を区別する
文書台帳に、文書番号、名称、版、施行日、承認者、保管部署、関連する製品・工程を記載します。最新版の手順書と旧版を別に管理し、過去の記録には当時適用していた手順を結び付けます。M&A用のフォルダを作る際も、原本の所在が分からなくならないようにします。
- 品質に関する手順書と文書管理台帳
- 教育・訓練の記録と対象者の一覧
- 内部監査や外部調査の記録、指摘への対応
- 苦情、不適合、是正対応、変更管理の記録
- 委託先や供給者との品質に関する取決め
上記は整理の入口です。必要資料は対象事業や製品に応じて絞り込み、すべての会社に同じ資料がある前提で進めないでください。
監査指摘は対応の経緯まで一組にする
指摘事項、原因の分析、対応計画、実施記録、効果の確認を同じ管理番号で参照できるようにします。「対応済み」という一覧表だけでは、買い手は何を確認して完了としたのか判断できません。未完了の場合は責任者、期限、遅延理由を添えます。
社内では解決したと考えていても、確認資料が不足していることがあります。担当者の説明と記録を照合し、追加説明で補えるもの、事実確認が必要なもの、改善作業が残るものに分けて管理します。
不足を見つけても過去の記録を作り替えない
記録が見つからない場合は、保管場所や委託先への確認経緯を残します。後日作成する説明書には、作成日、説明者、根拠資料、確認できなかった点を記載し、当時の原記録と区別します。過去の承認や実施を裏付けなく補完することは避けます。
整理の優先順位は、安全や供給継続に関係する未解決事項、重要製品の変更履歴、監査指摘の対応状況などから検討します。文書の量よりも、重要事項を説明できるかを確認してください。
開示前に閲覧範囲を決める
買い手へ渡す写しには資料番号と版を付け、原本の管理者を決めます。個人情報や取引先の秘密を含む部分は開示範囲を確認し、閲覧者と提出履歴を記録します。質問への回答で新しい版を出す場合は、差替え箇所と理由を伝えます。
制度の確認にはPMDA「QMS適合性調査業務」を参照し、個別の要求や保存の扱いは品質・薬事担当者と確認します。
関連する準備
買い手の調査観点は薬事・QMS・品質記録の確認、他部門と共通の資料管理はDD前に準備する資料一覧をご覧ください。

